配偶者に家を遺すには?②
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5 遺言書を書く際の注意点
遺言書を書く際は、必ず「配偶者居住権を妻に遺贈する」と明記してください。
これは、妻Bが、配偶者居住権の取得を希望しない場合に、配偶者居住権の遺贈のみを拒絶することができるようにするためです。
たとえば、妻Bが、Aさん亡き後は一人で暮らすのはつらいので、老人ホームに入りたいと考えたとします。この場合に、「相続させる」という文言が使用されていると、相続放棄や別途遺産分割協議をする必要が生じてしまいます。
相続放棄をするとすべての遺産について放棄することとなってしまいますし、遺産分割協議の場合は他の相続人全員に同意してもらう必要があります。
この点、配偶者居住権を「遺贈」によって取得したとすれば、遺贈は放棄又は一部放棄が可能であると解されていますので、配偶者居住権だけを放棄し、その他の遺産について遺言通り受け取ることが出来ます。
6 配偶者居住権を取得した場合
配偶者居住権を第三者に主張できるようにするためには、法務局で登記をする必要があります。
自宅土地建物の名義は、子Cになりますので、子Cが第三者に売却することも可能です。子Cから自宅土地建物を購入した方から妻Bが退去を求められた場合、配偶者居住権の登記をしていないと退去せざるを得なくなってしまいます。
妻Cに登記などの諸手続の負担をかけたくないという場合は、遺言通りの内容を実現する役割を果たす遺言執行者を指定しておくことをお勧めします。
7 配偶者居住権を終身にしないことのメリット・デメリット
前記の通り、配偶者居住権は、終身ではない存続期間を定めることも可能です(民法1030条)。
ですから、Aさんが亡くなったあと、妻Bが何年間かは自宅で過ごしたとしても体力的にも将来はホームに入所することになるだろうことが予測される場合は、終身にせずに遺言書に存続期間を定めておくことも可能です。
配偶者居住権の評価額は、存続期間の長短によって価値が上下しますので、預貯金を多く遺してあげたいとお考えであれば存続期間を定めるのも一つの方法です。先ほどのAさんの場合、存続期間を短くしたことで配偶者居住権の評価額が仮に500万円まで下がるとすれば、妻Bは預貯金1500万円取得することが可能となります。
ただし、前記の通り、配偶者居住権の存続期間を定めた場合には、その延長や更新ができせんのでご注意ください。妻Bが、Aさんが亡くなった場合はすぐにホームに入所したいとお考えであれば、配偶者居住権を遺贈しないほうがよい場合もありえます。遺言書を作成なさる際は、是非一度弁護士にご相談ください。
8 妻Bは、不動産を相続した子Cに支払うべき金銭はあるか?
自宅不動産の所有者は子どもになりますが、妻Bが子Cに家賃を払う必要はありません。しかし、配偶者居住権を取得した方は、居住建物の「通常の必要費」は負担することとなっています(民法1034条1項)。「通常の必要費」とは、建物の保存に必要な修繕費や不動産の固定資産税等のことです。
妻Bがこうした必要費を支払わない場合、子Cは、自分で費用を支出したときは後日妻Bに支払うよう請求することが可能となります。完全に無償というわけではないのでご注意ください。
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