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新型コロナウィルス感染症に関する企業の対応⑤

● マイカー通勤時の事故に関する法的問題点

・ はじめに

 新型コロナウィルス感染症では、特に①密閉空間(換気の悪い密閉空間)、②密集場所(多くの人が密集している)、③密接場面(互いに手を伸ばしたら届く距離での会話や発生が行われる)という3つの条件が同時に重なる場では、感染を拡大させるリスクが高いと考えられています。
 したがいまして、公共交通機関の利用に際しても、感染リスクが考えられます。
 そこで、企業の安全配慮義務の観点から、感染リスクを避けるため、マイカー通勤を容認することが考えられます。
 もっとも、マイカー通勤を容認する場合、予期せぬ事故が発生してしまうことも想定し、その場合に生じうる問題点について、事前に確認・検討し、対策を取る必要があります。

・ 労災保険

 従業員が通勤により負傷した場合、通勤災害(従業員災害補償保険法7条1項2号)と認定されれば、療養給付等の保険給付を受けることができます。
 通勤災害における「通勤」とは、従業員が、就業に関し、住居と就業の場所との間の往復等の移動を、合理的な経路及び方法により行うことをいいます(同法7条2項)。
 したがいまして、新型コロナウィルス感染症の対策として、通常は公共交通機関を利用して出勤する従業員に対して、マイカー通勤を容認する対応をとった場合、通勤が合理的な経路及び方法により行われていれば、労災保険給付の対象となります。
 なお、通勤途中で買い物等をして通勤経路を逸脱した場合等において、保険給付の対象とならない場合もあります。企業としては、マイカー通勤を容認するに際し、通勤経路の届出をさせて、通勤経路を把握することも必要と考えます。

・ 従業員が通勤中に事故を起こして加害者となった場合

 従業員が通勤中に事故を起こして第三者に傷害を負わせた場合に、使用者が責任を負うかが問題となる場合があります。
 すなわち、民法715条は、「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。」と規定しています(使用者責任)。また、自動車損害賠償法第3条は、「自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によって他人の生命又は身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずる」と規定しています(運行供用者責任)。
 そして、従業員が任意保険に加入していない場合において、当該従業員の支払能力にも限界があるため、上記規定に基づき、使用者の責任の有無が争われるケースが少なからず存在します。
 従業員が起こした交通事故に関する使用者の責任の有無は、個別の事案の事情に応じて判断されることになりますが、例えば、マイカーを業務においても使用させていた等の場合には、使用者責任を肯定する方向で考慮されると考えられています。
 そこで、企業としては、マイカー通勤を容認するに際しては、任意保険の加入の有無を確実に確認し、新型コロナウィルス感染症が終息するまでの限定的な扱いであり、業務での使用を禁じること等を従業員に周知する必要があると考えます。

● その他

 上記事項の外、各企業において新型コロナウィルス感染症への対策等でご疑問点、ご不安点等ございましたら、お気軽にご相談ください。

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