新型コロナウィルス感染症に関する企業の対応④
● 新型コロナウィルス感染症と従業員の労務管理
・ 従業員のプライベートな活動を制限できるか
企業は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をしなければなりません(労働契約法5条)。
そのため、会社としては、従業員が新型コロナウィルス感染症の感染者と接触する機会をできる限り減らすことができるよう配慮することが求められます(安全配慮義務)。
そこで、従業員自身の感染を防止すると共に、職場での感染拡大を予防するため、従業員に対し、プライベートでのイベント参加や海外渡航等の禁止・自粛を求める企業が出始めています。
もっとも、従業員に対する指揮命令権が及ぶのは、あくまで業務に関連する事項に限られます。業務外のプライベートな時間をどのように過ごすかは、原則として個々の従業員の自由であり、企業が従業員に対し、プライベートでの活動について制限を加えることはできません。
したがって、プライベートでのイベント参加や海外渡航等についても、企業側ができるのはあくまで自粛要請にとどまり、法的な拘束力をもって禁止することはできないと考えられます。そのため、仮に、プライベートでの海外渡航を禁止したにもかかわらず、従業員が海外渡航を行っていたことが判明していたとしても、そのことをもって当該従業員を指揮命令違反として処分することはできません。
ただし、会社は、安全配慮義務の観点から、職場での感染拡大を可能な限り防止するよう配慮しなければなりません。
この安全配慮義務は、あくまで従業員が生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう「配慮」すべき義務であって、従業員の健康そのものを保証するものでありません。そのため、結果的に社内での新型コロナウィルス感染症の感染拡大を防止できなかったという場合、企業側は、このことから直ちに安全配慮義務違反に問われるわけではありません。
しかしながら、例えば、海外の特に感染が拡大しているエリアからの帰国者であって、感染が疑われることを認識していたにもかかわらず、出社を認め、何らの措置も講じなかったために、社内での感染拡大を招いたというようなケースでは、安全配慮義務違反に問われてしまうリスクがあります。
そのため、従業員のプライベートでの海外渡航が判明した場合には、在宅勤務や出勤停止といった対応を採るのが相当といえます(新型コロナウィルス感染症の潜伏期間が最大14日間程度と考えられていることから、在宅勤務ないし出勤停止の期間についても、14日間程度とするのが相当と考えられます。)。
● その他
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