新型コロナウィルス感染症に関する企業の対応①
● 企業の安全配慮義務
企業には、労働契約に伴い、従業員がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をしなければならない義務があります(以下「安全配慮義務」といいます。労働基準法5条)。
そして、同義務の違反が認められた場合には、同違反により生じた損害について、企業に賠償義務が発生することとなります。
そこで、本稿では、企業としてどのような対応をすべきかについて、安全配慮義務に関する点について、これまでにご質問のあった事項等について、一部ご紹介いたします。
・企業が持つべき視座
上記のとおり、企業は安全配慮義務を負っているため、従業員が、労務提供のために設置する場所、設備若しくは器具等を使用し、または企業の指示のもとで労務を提供する過程において、従業員の生命・身体等を危険から保護するよう配慮すべき義務があります。
新型コロナウィルス感染症については、発熱、せき、頭痛、倦怠感等の症状が発生するとされており、政府の基本方針では、一般的な状況における感染経路は飛沫感染、接触感染であるとされております。特に、閉鎖空間において近距離で多くの人と会話する等の一定の環境下であれば、咳やくしゃみ等がなくても感染を拡大させるリスクがあるとされています。
これらを踏まえた上で、企業にとっては、
①従業員に対し、体温測定等による従業員または同居家族の風邪症状の有無の把握を促す
②発熱等の風邪症状が見られる従業員に対する休暇取得等の勧奨
③従業員が感染者と接触する機会をできる限り減らすための配慮
等の措置をとることが、自社従業員の労務提供の過程においてその生命・身体を危険から保護するために重要な視座になるものと考えられます。
・社内で感染者が発生した場合、どのように対応すべきか
社内で感染者・濃厚接触者が発生した場合、安全配慮義務を尽くす観点からは、これらの者を休業させ、他の従業員が感染者と接触する機会をできる限り減らすよう努めるとともに、他の従業員に対しても、毎朝出勤前の体温測定等の経過観察を強く促す等、感染拡大防止に努める必要があります。
・企業において従前配布していたマスク等の確保ができていないが、問題はないか。
安全配慮義務は、企業において、従業員がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう必要な配慮を求めるものではありますが、従業員の安全や健康という結果を求める義務ではありません。
したがって、従前、従業員に提供していた消毒液等を、供給が不足している状況において確保できなくなったことをもって、直ちに企業が安全配慮義務に問われるものではありません。
● その他
上記事項の外、各企業において新型コロナウィルス感染症への対策等でご疑問点、ご不安点等ございましたら、お気軽にご相談ください。
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