新型コロナウィルス感染症に関する企業の対応②
● 在宅勤務(テレワーク等)の留意点
今般の新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、その感染防止に向けた取り組みの1つとして、テレワーク等の在宅勤務が推奨されています。しかし、これまで在宅勤務の導入を行っていなかった企業にとっては、初めての試みであることもあって、企業の皆様からは、従業員に在宅勤務を命ずるにあたり、労務管理の方法等いかなる点に留意して進めればよいか分からないとのご相談をいただくケースが増えて参りました。そこで、本稿では、在宅勤務を命ずるにあたり留意すべき点等についてご紹介いたします。
・ 就業規則の変更は必要か。
在宅勤務制度を導入するにあたっては、就業規則に在宅勤務に関する規定が必要となります。
規定の方法としては、①就業規則本体に直接規定する方法と、②「在宅勤務規程」といった個別の規程を定める方法があります。いずれの方法を採用する場合にも、在宅勤務に関する規程を作成・変更した際は、所定の手続を経て、所轄労働基準監督署に届出を行う必要があります(ただし、従業員が常時10人以上の場合です。)。
在宅勤務についても労働基準法の適用があることも踏まえ、規定すべき事項の例としては、
①在宅勤務を命じることに関する規定
②業績評価、人事管理を変更する場合、その取扱いに関する規定
③在宅勤務用の労働時間を設ける場合、その労働時間に関する規定
④通信費などの負担に関する規定
⑤社内教育や研修についての定めを行う場合、当該事項に関する規定
等が考えられます。
なお、就業規則の作成・届出義務がない会社(従業員が常時10人未満の会社)では、上記の事項について労使協定の締結、労働条件通知書での通知が必要となります。
・ 在宅勤務時の労働時間の管理はどのようにすればよいですか。
労働時間を管理するにあたっては、①始業・終業時刻の管理と②業務時間中の在席確認という観点から行う必要があります。
⑴ ①始業・終業時刻の管理
始業・就業時刻の管理については、コスト面も踏まえ考えた場合には、メール若しくは電話による管理が方法として考えられます。
従業員の数が多人数にわたるような場合には、勤怠管理ツールを利用することも考えられますが、緊急に対応する必要のある現在の社会情勢からは、上記の方法による管理を行うことが考えられます。
⑵ ②業務中の在席確認
上記のような、始業・就業時刻を管理した場合であっても、企業においては、その後実際に勤務を行っているか等の勤怠管理が困難であることが在宅勤務における不安として、相談を受けることがあります。これは、他方で、従業員の側からも、在宅勤務により、仕事をさぼっていると思われ、評価が下がったりしないかという不安にもつながるものといえます。
そこで、業務時間中の在席確認を行うことが考えられます。容易に導入できる方法としては、上記同様にメールや電話による状況の確認等があげられます。ただし、これらの方法によっても、万全な在籍確認とまではいえません。より確実に在籍確認を行うという観点からは、ZOOM等により在籍確認を行うことが考えられます。
ただし、いずれの場合を採用する際にも、労使間で十分に話合いを行ったうえで決定することをおすすめします。
・ 在宅勤務を拒絶する社員がいる場合に、どのように対応すればよいか?
適切に在宅勤務のルールが定められており、そのルールも合理的なものであり、他の従業員が問題なく在宅勤務を実施しているにもかかわらず、在宅勤務を拒絶する社員については、出勤扱いにする必要はないと考えられます(使用者の責に帰すべき事由による休業(労基法26条)にも該当しないため、休業手当の支払も不要となります。)。
・ 在宅勤務時の各従業員の通信費等についてはどうすればよいでしょうか?
在宅勤務に要する通信費等の費用については、その負担者等について明確なルール作りが必要となります。
企業及び従業員のいずれが負担するかについては、労使間での話合い等により決定することとなりますが、従業員に負担させる場合には、就業規則の変更が必要となります(労基法89条1項5号参照)。
なお、就業規則のない場合には、上記のとおり、労使協定や労働条件通知書での通知が必要となります。
取り決めの必要な費用については、
・情報通信機器の費用
・通信回線費用
・文具、備品、宅配便等の費用
・水道光熱費
等が考えられます。
● その他
上記事項の外、各企業において新型コロナウィルス感染症への対策等でご疑問点、ご不安点等ございましたら、お気軽にご相談ください。
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