敷金返還について
≪質問≫
私は、大学入学をきっかけに道外から札幌市に来ました。居住場所は、大学に近いアパートを借りることにし、敷金10万円を家主に交付しました。大学生活が終わり、アパートを引き払うことになったのですが、敷金10万円は戻ってきますか。なお、先日、掃除をしていた際に壁に小さな穴が開いているのに気づきました。この穴が契約当初に既に存在していたかどうか記憶にありません。
≪回答≫
敷金とは、アパートやマンション等の不動産の賃借人が、賃料や原状回復義務等、賃借人が不動産の賃貸借契約で負う債務を担保するために、契約成立の際、あらかじめ賃貸人に交付する金銭のことを言います。不動産の賃貸借契約では、敷金の交付を求められることが一般的です。
敷金については、2020年4月施行の民法改正前までは明文では規定されていませんでしたが、民法改正で新たに敷金についての条文が設けられました。すなわち、民法622条の2では、賃貸借契約が終了しで賃貸物の返還を受けたときや、賃借人が適法に賃借権を譲渡したときは、賃貸人は、受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない旨、規定しました。
質問のケースでは、賃借人である質問者様が賃料を適切に支払い、原状回復義務等も適切に履行していれば10万円全額が返還されることになりますが、ここで問題となるのが壁の穴です。これは原状回復義務の問題であり、敷金返還の場面でよく争いが生じます。原状回復の内容については、個々の契約によって様々であり、一概にその内容を特定することはできませんが、一般的には、賃借人は通常の使用により生じる損耗についての原状回復義務を負いませんが、通常の使用を超える損耗については原状回復義務を負います。なお、原状回復の問題については、国土交通省が詳細なガイドラインを作成して公開しています。
今回、問題となっている壁の穴は、通常の使用では生じないものと考えられますので、壁の穴を質問者様が空けてしまったということになれば、その原状回復義務を負う(修繕費用の支払義務を負う)ことになると考えられます。
もっとも、壁の穴が契約当初からあったか否かについて、争いになるかもしれません。このようなトラブルを回避するためには、契約当初の物件の状態を細かく確認し、後の立証のために写真を取ってデータを保管しておくことが有用です。また、原状回復義務の内容については、契約時に家主側(仲介業者)から説明があるはずですので、その内容をしっかり確認することが重要です。
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