従業員の横領等と重加算税(連載第3回)
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1 従業員の不正行為が会社の仮装行為と評価されるか否かの判断
(1) 裁決事例
どのような場合に、従業員の行為をもって会社による仮装行為であると認定されるかが問題となりますが、この問題について、最近、興味深い国税不服審判所の裁決が公表されました。
令和2年6月に公表された、国税不服審判所令和元年10月4日裁決(東裁(法・諸)令元-28、裁決事例集No.117)は、建物の総合管理の請負を業とする会社において、担当する工事について、施主との交渉、下請業者の選定、工事の管理等の対外的業務を任されていた従業員が、実際には発注していない下請工事を発注したかのように装い、配偶者の屋号を用いた虚偽の請求書を作成して会社に提出し、会社から配偶者の口座に送金処理をさせ、送金された金銭を私的に費消したという事案についてのものです
(2) 裁決の示した判断枠組み
この裁決は、この事案における結論としては、この従業員が配偶者名義の虚偽の請求書を作成した行為を会社の行為と同視することはできないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消しました。
裁決は、従業員の行為を会社の行為と同視できるか否かについて「①その従業員の地位・権限、②その従業員の行為態様、③その従業員に対する管理・監督の程度等を総合考慮して判断する」としています。
確かに、会社は、会社組織を構成する役員や従業員が、それぞれ一定の地位・権限を与えられ、その与えられた地位・権限に基づいて様々な活動を行うことで事業活動が成り立っているものであり、会社から与えられた地位・権限に基づいて会社としての立場で行う個々の役員や従業員の行為の総体が会社の行為と捉えられます。
そこで、従業員の行為が会社の行為と認定できるか否かについては、①の会社から与えられた地位・権限や、②の行為態様を重視して判断することには合理性があります。
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弁護士 藤野寛之
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