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長期間に渡って別居していた後に離婚する場合、年金はどうなるのか?(連載第2回)

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2 長期間別居していた場合の年金の扱い

合意分割の場合、年金分割の按分割合を合意又は裁判によって決定する必要があります。

この按分割合については、裁判例において「年金分割は、被用者年金が夫婦双方の老後等のための所得保障としての社会保障的機能を有する制度であるから、対象期間中の保険料納付に対する寄与の程度は、特別の事情がない限り、互いに同等とみて、年金分割についての請求すべき按分割合を0.5と定めるのが相当であるところ、その趣旨は、夫婦の一方が被扶養配偶者である場合についての厚生年金保険法78条の13(いわゆる3号分割)に現れているのであって、そうでない場合であっても、基本的には変わるものではないと解すべきである。そして、上記特別の事情については、保険料納付に対する夫婦の寄与を同等とみることが著しく不当であるような例外的な事情がある場合に限られる」(大阪高決平成21年9月4日・家裁月報62巻10号54頁)とされており、基本的には0.5とする運用がなされています。

それでは、婚姻してから短期間同居した夫婦が、その後長期にわたり別居した後で離婚する場合、年金分割の按分割合は「特別の事情」があるものとして0.5よりも低くなるのでしょうか。

ここで、婚姻してから9年間同居した夫婦が、その後35年間別居した後に離婚したという事例において、裁判所は「夫婦は互いに扶助義務を負っているのであり(民法752条)、このことは、夫婦が別居した場合においても基本的に異なるものではなく、老後のための所得保障についても、夫婦の一方又は双方の収入によって、同等に形成されるべきものである。この点に、一件記録によっても、抗告人と相手方が別居するに至ったことや別居期間が長期間に及んだことについて、抗告人に主たる責任があるとまでは認められないことなどを併せ考慮すれば、別居期間が上記のとおり長期間に及んでいることをしん酌しても、上記特別の事情があるということはできない」(大阪高決令和元年8月21日・判例タイムズ1474号23頁)として、別居期間が長期にわたるという事情のみでは「特別の事情」には当たらず按分割合は0.5となるという判断を示しました。

裁判所は、夫婦には互いに扶助義務があることを重視しており、別居の原因が年金分割を請求する配偶者にあるといった事情がない限りは、たとえ別居期間が長くても按分割合は0.5とする裁判がなされることが一般的です。

このため、かかる場合においては、配偶者との間で互いの将来の家計の見通しや離婚に伴う財産分与の扱いについてしっかりと話し合いを行い、按分割合について合意できるよう努めることが大切です。

3 年金分割の注意点

最後に年金分割の注意点について補足します。

(1)分割請求には期限がある

分割請求の期限は、原則として以下の事由に該当した日の翌日から起算して2年以内です。

①離婚をしたとき

②婚姻の取消しをしたとき

③事実婚関係にある人が国民年金第3号被保険者資格を喪失し、事実婚関係が解消したと認められるとき

(2)受給予定の年金の総額が分割されるわけではない

年金分割は、厚生年金保険の報酬比例部分を対象としたものですので、国民年金の老齢基礎年金等には影響せず、受給予定の年金の総額が当然に分割されるわけではありません。

4 最後に

年金分割は離婚に際して行われるものですが、円満な離婚のためには、年金分割のほかにも親権・監護権の帰属、財産分与の方法、離婚慰謝料の扱い等決めるべきことがたくさんあります。

年金分割でお悩みの方は、例えば財産分与の問題が手つかずになっていたり、離婚によって配偶者が相続人ではなくなることによって生じる将来の相続の方法にお困りのこともありますので、一度、当事務所までご相談下さい。

 

弁護士 田島麻紀子

弁護士 安川尚美

 

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