

労働問題コラム「就業規則の変更を理由に、一方的に給料を引き下げられた場合にはどうしたらよいのか」(元裁判官・労働審判官 弁護士内田健太)
1 相談内容
—「会社から、来年度から就業規則が改訂され、基本給が減額になると言われました。私自身はこのような変更に同意したことはありません。このような場合でも、変更に従わなければならないのでしょうか。」
2 はじめに
会社が就業規則を変えると、それが不利益なものであっても、従うほかないようなプレッシャーがありますよね。
しかし、就業規則を労働者に不利益に変更することができるのは、当該変更が合理的と評価される場合に限られます(労働契約法10条)。変更が合理的でないと評価されれば、変更は無効ですから、減額を受け入れる理由もありません。
そのため、変更に至った経緯について事情を聴いた上、関連裁判例との比較なども検討した上、当該就業規則の変更が有効かどうか、つまり「合理的」かどうかを検討することになります。
もし当該変更が無効である場合には、会社に対して、変更前の就業規則に基づいて、賃金の差額などを請求することになります。
3 解説
⑴ 一方的な不利益変更が認められる場合は限定されている
使用者は、就業規則を変更することで、労働者の個別の同意を得ることなく、労働条件を労働差に不利に変更できる場合があります。
もっとも、そのような変更は常に許されるわけではなく、不利益変更が法律上「合理的」なものと評価できる場合に限って有効になります(労働契約法10条)。
⑵ 判断のポイント
不利益変更が合理的か否かは
・労働者の受ける不利益の程度
・変更の必要性
・変更後の就業規則の内容の相当性
・労働組合との交渉の状況
・その他の事情
を総合的に考慮して判断されます。
非常に抽象的な要件であり、考慮する要素も多いため、難しい判断になりがちです。裁判例を見ても、1審と2審などで判断が分かれる場合も少なくありません。
事案の見通しを立てるためには、事情の詳細な聞き取りと類似裁判例との比較検討が不可欠になります。
4 まとめ
賃金は労働者にとって重要な権利であり、その一方的な削減は、生活の見通しに大きな影響をもたらす深刻な問題です。
私自身、裁判官時代に労働審判官として多くの労働審判を担当してきました。その経験をもとに、裁判になった場合の見通しをふまえ、依頼者の方の要望を踏まえ、方針を決定していきます。
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