

労働問題コラム「労働協約によって労働条件が不利益に変更された場合にはどうしたらよいのか」(元裁判官・労働審判官 弁護士内田健太)
1 相談内容
—「自分の会社の労働組合が労働協約を締結した結果、退職金の支給率が引き下げられました。自分自身はこの内容に納得しておらず、同意をしたこともないのですが、従わなければならないのでしょうか。」
2 大まかな対応方針
労働協約を無効とするのは、一般的にハードルが高いとされています。
しかし、一部の者にだけ不利益が生じるような差別的な内容の協約等、ケースによっては無効になる場合もあります。
そのため、労働協約の締結過程やその内容等を総合的に判断し、労働協約の効力について検討します。
労働協約が無効となれば、変更前の労働契約を理由に、退職金などを請求していくことになります。
3 解説
(1)労働協約を無効とするのはハードルが高い
会社側が作る就業規則と違い、労働協約は労働者側の利益を代表する者、つまり労働組合や過半数代表者などが、会社側と合意することで成立しています。そのため、不利益変更であっても、就業規則よりも有効性が認められやすい傾向にあり、無効とするハードルは高いとされています。
判例上、手続的に問題のない労働協約が無効となるのは、一部(又は特定)の組合員をことさらに不利に扱うことを目的として労働協約が締結されたなど、特段の事情がある場合に限られます。
(2)例外的に無効と認められる場合もある
とはいえ、実際に労働協約が無効と判断された裁判例などもあります。
そのため、具体的な事案を聞き取った上、類似の裁判例の調査も踏まえ、事案の見通しを立てることになります。
(3)そもそも自分が入っていない組合が締結した場合
不利益変更を伴う労働協約が、自分自身が所属していない組合によって締結された場合は、より複雑です。そもそも労働協約の効力が自身に及ぶかが問題となりうるためです。
このような場合には、今までの検討とは別の観点から、労働協約の効力が否定される場合もあります。
ここでも、具体的な事情をふまえて、見通しを検討することになります。
4 お悩みの際は、是非ご相談を
労働条件の不利益変更は、労働者にとって重大な問題です。労働組合等が合意しているとなると、味方が少なく、心細く感じることもあるでしょう。
私自身、裁判官時代に労働審判官として多くの労働審判を担当してきました。その経験をもとに、裁判になった場合の見通しをふまえ、依頼者の方の要望を踏まえ、方針を決定していきます。
お困りの際は、是非、ご相談ください。
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