トピックス

HOME > 倒木による樹木の占有又は所有者の責任(連載第1回)

倒木による樹木の占有又は所有者の責任(連載第1回)

 今年も台風の季節が近づいてきました。
 ニュースなどで大きな樹木が横倒しになっている様子がよく映し出されます。

 所有している土地に樹木がある方は、倒木の映像をご覧になって、もし木が隣家に倒れて建物が壊れたり人が怪我などした場合どうなるのだろうと不安に思われることもあることと存じます。

 そこで、今回は倒木による樹木の占有又は所有者の責任についてご説明します。

1 民法の規定

 民法717条は、「土地の工作物」の設置又は保存の「瑕疵」によって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者又は所有者は、被害者に対して損害を賠償しなければならず、このことは「竹木の栽植又は支持に瑕疵がある」場合も同様であると定めています。
 この規定により、自宅敷地内の樹木が隣家に倒れて建物や人に損害が生じ、それが樹木の「設置又は保存の瑕疵」が原因の場合には、樹木を占有又は所有する人は、被害者に対して損害賠償をしなければなりません。

 以下、ご説明します。

(参考)

 民法717条1項

土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない

 民法717条2項

前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する。

2 竹木の「栽植又は支持の瑕疵」とは?

 民法717条1項の工作物の設置又は保存の「瑕疵」とは、その工作物の建造又はその後の修理などに不完全な点が存すること(その種の工作物として通常備えているべき安全性が欠けていれば瑕疵がある)をいいます。

 ここで、台風によって倒壊した樹木の所有者の責任が問われた事例において、裁判所は樹木の「支持の瑕疵」について次のとおり判断しました(宇都宮地裁平成27年12月17日判決。判例時報2285号79頁)。

「本件杉の木は、本件事故当時、葉を青々と茂らせていて、外見上は正常な樹木との判別がつき難い状況にあったものの、幹内部の腐朽・空洞化はかなり大きく進行していて、葉を多く生い茂らせている分だけ余計に風圧の影響を受けやすく、折損可能性が非常に高い危険な状態に至っていたものであるから、本件杉の木の「支持に瑕疵」(民法717条2項)があったことは明らかである」

 以上の判断から、当該樹木が「折損可能性が非常に高い」といえる状態である場合には、樹木の「支持に瑕疵」があるとして、樹木の所有者は倒壊によって損害を被った被害者に対して損害賠償をしなければなりません。

 

※本連載第2回では、樹木の倒壊に台風が寄与していた場合の責任の有無等についてご説明します(8月26日公開予定)。

〒060-0002
札幌市中央区北2条西9丁目インファス5階
TEL 011-281-0757
FAX 011-281-0886
受付時間9:00~17:30(時間外、土日祝日は応相談)

はじめての方でもお気軽にお問い合わせください。

お問い合わせ

お悩みや問題の解決のために、私たちが力になります。折れそうになった心を1本の電話が支えることがあります。
10名以上の弁護士と専門家のネットワークがあなたの問題解決をお手伝いします。まずはお気軽にお問い合わせください。