【所長コラム】弁護士として、2つの集団訴訟から学んだこと〜社会に対する理不尽との戦い、司法の歪みを救済する活動がはじまる
札幌弁護士会所属、村松法律事務所所長 弁護士の村松弘康です。
2つの集団訴訟から私は多くのことを経験し、学びました。
まさに運命的出会いであり、弁護士としての活動の信念をつくる基礎となったと思っています。
さて、クロム粉じんも、金属鉱山の粉じんも吸入すると肺疾患を発症することが古くから知られていました。
雇用主となった会社は、この事実を知りながらその危険性を十分に知らせることなく、労働者を作業に従事させていたことになります。生命に関わる危険な情報を知らせず、健康管理も不十分なまま働かせたことに、強い理不尽さを感じました。
きちんとした被害救済と再発防止を図らなければ、病気になった人や死亡した人達が浮かばれないとも思いました。
裁判の争点は3つでした。
主として「因果関係」と「予見可能性」と「時効」です。
とりわけ時効については、粉じんを吸入し続ければ、肺がんやじん肺になることをあえて知らせないまま働かせた以上、時効の援用が許されてはならないのは当然だと思いました。
しかし、高く厚い司法の壁を越えるために多くの労力と時間を要したのです。
長い裁判を経験して、裁判所は、権利を守るための徹底した戦いなしに被害者に振り向くことはないと痛感しました。
クロムもじん肺も長い時間がかかりましたが、いずれも勝利的解決を経験し、粘り強く諦めずに戦うことの重要さを体験させてもらいました。
不正義・不条理・理不尽だと感じたら、とりあえず走りはじめる。走りながら考え、考えながら走る癖は、クロムとじん肺の経験がなかったら身につかなかったと思います。
裁判を進めるための定期的な弁護団会議の他に、争点を集中的に検討する弁護団合宿がありました。
クロムの弁護団長は飄々とした鈴木悦郎先生、事務局長は理論派の山中善夫先生でした。
じん肺訴訟の弁護団長は、難解至極な言語を駆使し、中村ワールドを展開し続け、若い弁護士を煙に巻いた中村仁先生でした。
団長に率いられて歩兵は奴隷のように黙々と行進しました。
弁護団には多くの弁護士が集い、徹底的な議論をし、訴訟を準備し、尋問に取り組みました。
弁護団での経験は今も、弁護活動の原点を考え続けるきっかけになっているのです。
2つの事件とも、最初から勝利が見えていたわけではありません。
先例もありませんでした。
なぜ挑戦したのか、このような理不尽は許せない。
繰り返してはならないという使命感のようなものに突き動かされて身体が先に動いてしまい、走りはじめてしまった、というのが本当のところです。
失敗の可能性ばかりを考えていたら、足が止まってしまいます。
どうしても責任を認めさせなければならない、どうしても正さなければならないという、利害を超えた覚悟があれば、自ら一歩踏み出す力がわいてくると思います。
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